「じゃあ、次のところを江戸川くん」
「はい・・・」

とろりとした空気が流れる4時間目は国語。
静かな教室にコナン君の声だけが響く。
ちらり、と後ろのほうを向けば、元太君は給食前だから、なんだかそわそわ落ち着かなくしているし、光彦君は、教科書のうんと先のほうを読んでるみたい。
哀ちゃんは、興味なさそうに窓の外をぼんやりと眺めている。

隣の席、見あげれば、声だけじゃなくて、やっぱりすっごく面倒くさそうなコナン君の顔。
でも、棒読みというわけではないので、お母さんや図書館の人が読み聞かせてくれる時みたいに、その物語の場面がすっと頭に入ってくる。
おうちに絵本があるし、お母さんに読んでもらったこともあるから、知らないお話じゃないのだけれど、いざ自分で読むとなると、どうしても漢字のところでちょっとつまってしまう。
これでも、本読みは得意なほうなんだけど、コナン君には全然かなわない。
いつも難しい漢字でいっぱいの本を読んでいるから、コナン君にとっては朝飯前なんだろうけれど、歩美から見ればやっぱりすごいなぁと思う。
事件の時も、ほんとうの探偵さんみたいでカッコイイなと思うけど、こういうなんでもないところでも、やっぱり、コナン君ってすごいなぁと思う事、たくさんある。

歌がとっても下手っぴだとか、あんまりゲームはうまくなくて、いつも元太君や光彦君にからかわれてたりだとか、苦手なことだってあるけれど、いろんな事を知っていて、なんでもできちゃう、そんなコナン君はやっぱり歩美にとって、ヤイバー以上のスーパーヒーローなんだよね。

そんなコナン君だから、事件の時には、私や元太君や光彦君のこと、すぐに子ども扱いして、置きざりにして、ひとりでどんどん行ってしまう。
それも1度や2度じゃあない。
心配してくれるのは嬉しいけど、自分だって子供なのに!

スーパーじゃないわたしたちじゃ頼りにならない、かも、だけれど・・・それでもみんなで少年探偵団なんだもん、どうすれば、コナン君に認めてもらえるのかな・・・・・・?



「じゃあ、次を吉田さん」
「・・・・・・」
「吉田さん?」
「あ、は、はい!」

どうすれば認めてもらえるか、ぼんやりコナン君を見ながら考えていたら、いつの間にか教科書は読み終わっていたらしい。
集中する視線に、思わず頬が熱くなる。

「江戸川君の見事な朗読に聞き惚れるのもわかるけど、負けないように、続き。がんばって読んでね」
「はい・・・」
「・・・23ページ5行目」
「ありがとう・・・」

後ろの席から、続きのページを教えてくれる、哀ちゃんの小さな声。
ずっとコナン君のほう見ていたの、先生にまでバレてるんだと少し恥ずかしくて、うつむいたまま席を立つ。

教科書越し、ちらりとみた隣の席のコナン君は、頬杖をついて、興味なさそうに親指で教科書のページをぱらぱらとさせていた。

いつか。今はムリだとしても、いつか教室の席だけじゃなくて、顔を上げて、そのとなりにならべますように――そんなことを思いながら、大きく息を吸い込み、教科書の続きを読み始めた。


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