「未成年は、お酒飲んじゃダメなんだよ」
「だったら、座ってみかん食え。初詣は明日付き合ってやるから」
「ほんとに?約束だよ?絶対だよ?」
「そんなしつこく念押ししなくても大丈夫だって。もともと誘いに行くつもりだったしな」
「そ、っか。そうか。そうなんだ・・・」
「何ニヤニヤしてんだよ」
「べっつにー。おみかん美味しいからだよっ」

くふふ、と笑いながらみかんの皮をむいている青子は、本当に嬉しそうで、口では素直でないことを言ってはいるものの、俺と過ごす時間が嬉しいんだなと思ってくれていることが、感じられたから。
仕事にかまけてほったらかしにしておいたことを申し訳なく思いつつも、そういうささやかなことがなんだか嬉しくて、こちらもついニヤニヤとしてしまう。
ふたりで、こたつの上のかごの中で山盛りになっているみかんをもりもりと食べつつ、テレビがつまらないと言っては突っ込みを入れてみたり、大量に出された宿題に悪態をついてみたりと、他愛のない会話で盛り上がった。
話題も一段落したかな、と言うところで流れた一瞬の沈黙。
先に口を開いたのは青子だった。

「そ、そういえば快斗はこの1週間、何してたの?」

きた、と思った。
さりげない風を装いながらも、なんとなく声が不自然だったのは気のせいなんかではなく、本当はずっとこのことを聞きたくて、いままでタイミングを計っていたのだろう。
まさか泥棒してましたなんて素直に答えられるはずもなく、俺は無難な答えで適当に誤魔化すことにした。

「そりゃまあ、いろいろ忙しくて」
「快斗最近付き合い悪いよね」
「そうか?」
「そうだよ。こうやってゆっくりお話しする時間なんて、ほとんどなかったもん。最後に会ったのって、クリスマスだよ」
「あー、そうだっけかな」

痛いところをつかれ、どうすっかな、と考えていた時間はそんなに長くなかったはずだけれど、青子がかぶせるように問いかけてきた。
そこにはさっきまでのふざけた雰囲気はなくて。

「ねぇ」
「なんだ、改まって」
「快斗、本当になにしてたの?」
「浮気してないことは確かだな」
「もう、そんなのわかってるわよ!そうじゃなくて!」
「そんな興奮すんなよ。普通に色々忙しかったんだよ。師走だし」
「主婦でもあるまいし、師走関係ないでしょ!」
「バッカ、オメー、おふくろがふらふら出歩いて家放りっぱなしだから、今じゃ主婦は俺だよ」
「でも、全然片付いてないじゃない」
「いやそれは」
「ねえ」

その声には、

「んだよ」
「なに、してるの?」

 


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