摂社を回っている間に、人混みもましになるかと思いきや、賽銭箱の前は参拝客でごったがえしていた。
青子のぶんも賽銭を受け取り、勢いよく前に向かって投げる。
後ろからぞくぞくと人がやってくるので、あまり長い時間立ち止まっていられない雰囲気だったけれど、青子はなにやら長々と願い事をしていた。
「よしっと、お待たせ!」
「おう。じゃあ、とっととこっから離脱するぞ」
もみくちゃにされそうになっていた青子の手を引いて、賽銭箱の前から離れる。
神社から駅に向かう道は一方通行になっていて、行きとはうって変わって空いていた。
自動販売機で暖かい飲み物を買い、駅方面へ向かって歩く。
「快斗は何をお願いしたの?」
「そういうオメーは何お願いしたんだよ。なんかやたら長かったろ」
「当然、受験がうまくいきますよーうに、だよ」
「オレのためのお願いしてくれたんじゃねーのかよ」
「それはさっきたくさんしておいたもーん」
「大きさからして、メインのがご利益ありそうじゃねーか?」
「あ、そんなこと言って、差別すると快斗、お願い聞いてもらえないよ?」
「あーあー、そんなケチくさい神様だったら、こっちから願い下げだね」
「うそうそ、ちゃんと快斗のこともお願いしておいたよ」
そう言うと、青子は俺の腕にぎゅうとしがみついてきた。
「お、大胆ですね」
「だって、こっちの方があったかいもーん」
「だったらこのほうがあったかいだろ」
青子を抱きしめたい。
その欲望のまま、後ろから覆いかぶさるようにして青子を抱きしめる。
青子は驚いたのか突然立ち止まったけれど、すぐに俺の腕から逃れるために歩き始めた。
「ちょっとー、歩きにくいって」
「大丈夫大丈夫」
「人も見てるし」
「だいじょうぶ・・・」
「じゃなーい!」
口では拒否をしていたけれど、くすくす笑いながらでは説得力もない。
酔っ払いのように、ふたりふらふらと押し合いながら、駅に向かって歩いた。