ほんとうはね、気づいてるんだよ。
気づいちゃったの、知ってるの。
わかんないわけないじゃない。
わかるわよ、だって、だって。
あの日から、いつも新一のことばかり考えてるんだよ――
■ さぐり合いはもうおしまい
重なるふとした仕草や表情。
知るはずの無い、ふたりだけのヒミツの思い出。
コナン君は新一なんじゃないかって、今まで疑問を抱いては打ち消してきたけれど、それが、すとんとあるべき場所に納まって、いつも傍らにあるやさしい空気に気づいたのは、前以上にあなたのことばかり考えているから。
負けず嫌いなところ、気の無い振りして、ほんとうは面倒見が良くてやさしいところ、夢中になると周りが見えなくなるところ、わたしが困っていると、必ず目の前にあったあなたの手
―― 今も昔も本質のところはちっとも変わっていない。
眼鏡を外せば、ほんとうに子供の頃の新一のままだもん、私の前では外さないようにしているみたいだけれど、寝起きの顔、何度も見てるよ?
それにね、前よりわたしのこと、意識してくれてるよね。
スキやソツがなさそうに見えて、迂闊なんだから。
あなたは私のこと、やっかいな難事件だなんて言うけれど、あなたの方が難しすぎると思うの、だって。
―― どうして、そんな姿で私の前にいるの?
まず湧いたのは怒りよりも疑問。
新一 が、理由も無く小学生のふりなんてし続けているわけがない。
あの日、トロピカルランドで別れた後に何があったの?
子供の姿なのは、博士の発明のせい?
だとしたら博士や、たぶん哀ちゃんも、おばさまだって、コナン君のこと知ってたもん、知ってるんだよね?
いつも、電話で言っている手が離せない『事件』って、このことが関係しているの?
・・・姿まで変えて、何もかもヒミツなのは、あぶないこと、してるから?
どうして、私にだけ教えてくれないの?
どうして、17歳の新一じゃだめなの?
なぜなぜどうしてばかりが積み重なって、そこから先に進めない。
ただ、わたしのこと、大切に思ってくれていたんだ、いるんだってことは、コナン君になってからの、あなたを思い返せばわかるから。
そばにいるってわかっても、わかったからこそ、あの告白の時みたいな、確かな言葉が欲しいと思うのは贅沢なの?
だから、 あなたの告白に、まだ自分の言葉で返事すら返せていなくて、だからこそあの銀杏並木の時のように、知らないままに疑問をぶつけられない。
聞きたくて、苦しくて。
でも、困らせたくなくて。
どうしたらいいのかわからないの。
ねぇ、この難問を解くための、きっかけが必要なんだよ。
200/10/05 江戸川コナンの日