ほんとうのあなたを知りたいの。














 いまのってセーフ?











「セーフなわけ、ないじゃない」

背後からの突然の突っ込みに、あわてて振り返れば、俺の携帯を手にした蘭が立っていた。

「うわっ、蘭!・・・ねーちゃん」
「何が『ねーちゃん』よ。遅いわよ、いまさら」
「あっ・・と、それは、その・・・」

蘭の迫力に押されて、ひるむ俺を尻目に、携帯の着信履歴を確認するためボタンを操作する蘭の表情は真剣そのもので、じっとディスプレイを見つめた後、ふう、と小さくため息をひとつ。
無言で手にした携帯をずいっと差し出してきた。
恐る恐る受け取れば、蘭はずうっとしゃがんで、今度は俺の右手を取った。

「アウトに決まってるじゃない、現行犯」

ぎろり、とまだ手にしたままだった変声機を睨まれれば、それ以上言葉が続けられなくて。

「これも、博士の発明?」
「あ、っと・・・うん、博士に、探偵団用に・・・」

言い訳してみたものの、近くで見れば、子供のおもちゃです、というには出来すぎているのは明白で、少年探偵団のバッチや時計とは明らかに出来が違う。
そもそも、あの少年探偵団の活動のどこに変声機なんて代物がいるのか。
苦しすぎる言い訳をどう思ったのか、今度は、ひょい、と机に伏せたペーパーバッグをとりあげ、ぱらぱらとめくる。

「小学生がこんなの読めるわけ、ないし」
「あ、いや、それは・・・」
「ああでも、英語、話してたっけ。すっっっっごく流暢に」

ぱたん、と勢いよくページを閉じられて、びくりと肩をすくめる。
こりゃもう、誤魔化しきれねーな、と覚悟を決めた瞬間、ぎゅうと抱きしめられた。

「・・・ばっかみたい・・・」

今にも泣きだしそうにな声、もう泣いているのかもしれなくて。
そろそろと背中に手を回したけれど、抱きしめきれない蘭の背中に、ため息がこぼれた。

「ごめん」
「なんであやまるの」
「ごめん」
「謝らないでよ」


蘭の腕の中、それ以上言葉を続けられなくて、せめてもと背中に回しきれていない腕に力をこめる。
見上げた先、ひとつ、またひとつと、ぽつぽつ天窓に増えていく雨粒が、まるで蘭の涙みたいだなと思った。

 

200/10/10 江戸川コナンの日


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