帰り道



快斗は、すぐに青子の事、お子様あつかいするけれど。
全然わかってないと思ってるみたいだけど。

わかってないのは快斗のほうだと思う。

たぶん快斗は青子のこと、好きだよね??
青子だって、快斗のこと・・・





明日は快斗のお誕生日。

何をあげたら喜んでくれるのかな?
ちゃんと想いが伝わるものってなんだろう。

ダメだ、全然思いつかないよ。

そんなことばかり考えていたら、いつの間にか放課後になっていた。

「・・・あーおこっ!なにぼんやりしてんだよ。帰ろーぜ?」
「あ、ご、ごめん!すぐ準備するから、ちょ、ちょっとまってね・・・」

ぼんやりしてたせいで、机の上は、まったく片付いていなかった。
あわてて、教科書をかばんにつめこんでたら、教室の外から少し高めの落ち着いた声がした。

「黒羽くん、いま、いいかな?」

あ。
また、だ。

自分の気持ちにはっきり気づいたのは、最近こういうことが多くなったから。
快斗の気持ちに気づいた・・・つもりなのも。

はじめは、いっしょに帰れなくてイヤだな、くらいにしか思ってなかった。

でも、気がついた。
快斗が誰かのものになっちゃったら、いっしょにいれなくなるんだって。
これは、あたりまえじゃないんだって。




「青子、先に帰ってるね!」

だから、いつもそう言って、先に教室を飛び出した。

でも、そのあとも、こういうことがたびたびあっても、快斗はかわらずそばにいてくれる。
それって・・・幼なじみだからってだけじゃないよね?
快斗に告白してくる子は、かわいい子や美人な子ばっかり。
今の子だって、すっごい大人っぽくて。

でも、やっぱり青子の横にいてくれる。
それって・・・それって、青子といるほうがいいってことだよね?
スキでいてくれるって、自惚れちゃってもいいんだよね。


でも・・・もしかしたらって。
いつもいつも不安になる。
このまま、こんどは、快斗が追いかけて来てくれないんじゃないかって。





「あーおこっ」
「あ、恵子・・・」
「残念でした、快斗君じゃなくて。なんか話し込んでたみたいだから、時間かかりそうだったよ」
「そう、なんだ」
「そーんな、あからさまに残念そうな顔しないでよね。たまには私といっしょに帰って、女の友情も深めようよ。そうだ、すっごいかわいい雑貨屋さんみつけたんだよ。たまには付き合ってよ」
「うん・・・そう、だよね!私もちょうど見たいものあるし、帰りにクレープも食べていかない?」
「いいわね、いいわね、そうこなくっちゃ」


この機会に、誕生日プレゼントを選んでしまおうと、気持ちを切り替えたつもりだったけれど、気づけばやっぱり快斗のこと、そしてさっきの呼び出しが気になって、並んで歩く恵子との会話も上の空になってしまう。
そんな青子を、恵子は呆れた顔で見つめ、言った。


「あんた、またぼうっとしてる。今日の呼び出し、そんなに気にしてるの?あんなの、いつものことじゃない」
「うん・・・でも、今までそんな話し込んでるとかなかったし・・・さっきの子、すっごいスタイルよかったし、美人さんだったよね?快斗も、やっぱり大人っぽい子の方がすきなのかなぁと思って」
「それは・・・人の好みはそれそれだけど・・・一般的に男の子はそういうのキライじゃないんじゃないかな?まあ、快斗君は来るもの拒まずってかんじに見えて、青子・・・」
「じ、じゃあ、もしも青子が大人っぽくなったら青子とつきあってくれるかなっ!?」
「へ?」
「へ?って・・・」


恵子の声とは明らかに違う声。
振り返れば、見慣れた顔。


え・・・


えええええ?
どうして、どうして快斗がここにいるの!?
どーしよう、どうしたらいいの。
どうし・・・と、とりあえずっ・・・逃げようっ!!


後ろで固まってる快斗を置き去りにして、逃げた。
恵子が何か叫ぶのが聞こえたけれど、気にしてられなかった。

何かが解決するわけじゃないけど。
逃げ切れるとは思えなかったけど。
とりあえず、今は顔、みれないから。
ゆでダコ見たいな顔も、見せれないから。



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