「射的やろう、射的!」
「射的?」
「うん。だって、あれ!あれが欲しいの」
青子の指差した先には、怪盗キッドの貯金箱が置かれていた。
しかも、本物とは似ても似つかぬほど造型が悪く、顔つきも微妙なシロモノで、どう考えても中国あたりで、本物のキッドを見たことのないやつらが作ったろう!という出来だった。
「うわ、あんなのがあるのかよ・・・」
俺がドン引きしつつもその貯金箱を品定めしている間に、青子はテキ屋のおじさんにお金を払って銃とコルク玉を受け取っており、嬉々として射的を始めた。
「うーん、なかなか倒れないなぁ」
青子の射撃の腕は悪くなく、コルクの玉はどんどんとキッドに当たっていたけれど、倒れる気配は一向になかった。
青子はさらにコルク玉を追加し、ばしばしとキッドに当てている。
青子があまりにもキッドばかり狙い撃ちにしているので、面白がって他の人たちもそのキッドを狙い撃ちしはじめた。
たとえメイドインチャイナのニセモノであったとしても、自分の分身が目の前で打たれまくっているのは気分のいいものではない。
「オメー、もういい加減あきらめたら」
「いいの、ああやって、キッドにばしばしと当ててるだけで満足だから」
「八つ当たりかよ!」
「当たり前でしょー!キッドのせいでお父さん大忙しなんだからね!ばかばかキッドー!」
本人を目の前にさらりとひどいことを言ってのけた青子は、さらに2回、コルク玉を追加し、ようやく満足したようだった。