「いやっほーい!さっむーい!ちょっと快斗、寒すぎるんだけど!」
「いやいやいやいや、オメーだろうが、自転車とか抜かしたアホはよ。普通に考えて地下鉄か電車だろうが」
「快斗、文句多いわね」
「人を風よけにしておいて、どの口がんなこと抜かしてんだよ・・・」
「でも、夜の街を自転車で走るのって楽しくない?なんかわくわくするじゃない!快斗、がんばっ!」
「その気持ちはわからなくもないが、だったら、オメーが自分でこげよ」
「えー、か弱い女の子にそんなことさせるの!?」
「か弱いねぇ・・・」
「ほらほら、見えてきたよ」
「うわ、結構人いるのな」
人っ子一人いなかった道には、神社が近づくにつれ、ぱらぱらと人が見えはじめ、参道の近くに着く頃には自転車ではもう通れないくらいの数になっていた。
駐輪場と思しき場所は見当たらず、仕方なく鳥居から離れた路駐地帯の一角に自転車を止め、俺たちは再度鳥居の方へ向かって歩き出した。
参道は人であふれており、油断をすればすぐにはぐれてしまいそうになった。
「手ぇだせ、青子」
「へ?」
「子供はしっかり見ておかねーとな」
「青子は迷子にはなりません!はぐれたって、携帯持ってるから大丈夫ですー」
「どーだか。オメー探してる時間勿体無いだろうが、ほれ行くぞ」
「んもう・・・」
手をさしだせば、青子はぷうと膨れながらも、素直に手を取った。
繋いだ手は、手袋越しでも暖かかく、二人並んで歩き始めた。
「しっかし、こんな時間なのに結構にぎやかだな」
「快斗、露店をひやかしちゃう?お参りだけにしておく?」