「歩いて行ける距離じゃないでしょ。電車よ、電車」
「だよなー。よし、そうと決まれば、とっとと出かけようぜ。上着取ってくるから待ってろ」

家から駅までは少し距離がある。
俺はいつもより厚めの上着と手袋、少し迷ってマフラーを首に巻き、手早く準備を済ませると、青子と一緒に家を出た。

外は思った以上に寒く、むき出しの頬に当たる風はひどく冷たかった。
隣を歩く青子は、寒い寒いを連呼している。

「オメー、自分から出かけるって言っときながら、文句多いんだよ」
「だって寒いんだもーん」
「だったら、もっと着込んでくればよかったんじゃねーのか?」
「だって、そんなことしたらむくむく太って見えるし・・・」
「なんだ、最後ハッキリ聞こえなかったぞ」
「うんもう、いいの。とにかく寒いってこと!」
「ったく・・・」

ぷうと膨らませた青子の頬が、寒さのためかやたらと赤くなっていたから。
俺は首に巻いたマフラーを外すと、青子のマフラーの上からさらに巻いてやった。
青子はひどく驚いた様子で、目をまんまるくして俺の方を見上げた。

「これ巻いときゃ、オメーのおたふくみたいな頬っぺたもマシになんだろ」
「ひっどーい!でも・・・ありがとね」

俺のマフラーに顔をうずめた青子は、くふふと幸せそうに笑っていた。


駅の改札をを出ると大勢の人でごったがえしていた。
参道も人であふれており、油断をすればすぐにはぐれてしまいそうになった。

「手ぇだせ、青子」
「へ?」
「子供はしっかり見ておかねーとな」
「青子は迷子にはなりません!はぐれたって、携帯持ってるから大丈夫ですー」
「どーだか。オメー探してる時間勿体無いだろうが、ほれ行くぞ」
「んもう・・・」

手をさしだせば、青子はぷうと膨れながらも、素直に手を取った。
繋いだ手は、手袋越しでも暖かかく、二人並んで歩き始めた。

「しっかし、こんな時間なのに結構にぎやかだな」
「快斗、露店をひやかしちゃう?お参りだけにしておく?」

 


すぐお参りに行く / 露店をひやかす