「わーったよ、行ってきてやるから、青子のおごりな」
「それなんか違うでしょ」
「デリバリー料だよ。俺はおでんおでんっと」
「こんな時間に!?快斗のがハイカロリーすぎでしょ」
「男子はいいんだよ。ほれ、早く金を出しやがれ」
「んもう、わかったわよ。青子も一緒に行く」
「そうそう、寒い思いをして買ってきたあとのおやつは美味いぜぇ」

青子は名残惜しそうにこたつから出てきたけれど、それは俺も同じである。

「よし、さっさと行って、さっさと帰ってこようぜ」

そこらにあった上着を適当に羽織り、俺は青子を促して、コンビニへと向かった。







「本当におでんなのね」
「ったりめーだろ。寒い日のおでん、サイコーだぜ」

青子の呆れ声を背中に聞きながら、店を出たところで、目の前を白いものが舞い落ちていった。
見上げれば、真っ黒な空から、次々はらはらと白いものが舞い落ちてくる。

「あ、雪」
「どうりで寒いわけだよな」
「急いで帰ろう。こっからだと、青子の家の方が近いよね。うちくる?」
「あー、んじゃそうすっか」

ほれ、とコンビに袋を渡せと言うつもりで手を差し出せば、
からませた指から、手袋越しでも熱が伝わる。
青子の家が見えるところまで来たところで、見慣れた背中を見つけた。


「あ、お父さん!」
「警部!」
「おお、青子に快斗君。こんな時間に・・・」

隠す必要はないけれど、なんとなく気まずくて、繋いだ手は離してしまった。
たぶん警部それを見ていたと思うけれど、気づかないフリをしてくれた。

「あのね、快斗にコンビニに付き合ってもらったの」
「この寒い中、悪かったね快斗君」
「全くです」
「ちょっと!どうしてそこで青子が悪者なのよ」
「実際、無理やり誘いに来て連れ出しただろうが」
「それは、そうだけど・・・」
「警部は今あがりですか」
「ああ、もともと2課は応援だからね」

警部がいるなら、今夜の飲み会は中止にするしかない。
残念な気持ちが半分、嬉しそうな青子の顔で仕方ないなと思う気持ち半分、おでんに少しの未練があったけれど、それはまた帰りに買えばいいだろう。
手にしていたビニール袋を青子に手渡し、別れを告げる。

「じゃあ、俺はこれで」
「おや、もう帰るのかね」
「そうだよ、快斗、これ・・・」
「警部がいたらまずいだろ、未成年」
「あ、そっか・・・」
「聞こえとるよ」

小さく囁いたにもかかわらず、警部には聞こえていたようで、じろりと睨まれる。
やばいなぁと、ひきつった笑顔を張り付け、それではとその場を立ち去ろうとしたら、ぐいと警部に手を引かれた。
驚いて顔を見れば、にやりと笑う警部の顔。

「まあ、今夜くらいはいいだろう。せっかくだ、あがっていきなさい」
「でも・・・」
「いいじゃない!いっしょに飲もう!」
「たまには、こういうのも悪くないだろう。あくまで、たまには、だがな」

そうだな、たまにはこんな年越しも悪くない。
警部に手を引かれ、青子に背を押され、俺は中森家の玄関をくぐった。

 


恋の(私が)耐久レース!警部エンドです。
いちおうはハッピーエンド、かな?

お付き合いくださり、ありがとうございました。