昼食フライング



「あれ?平次。どこいくん?」

3時限目終了のチャイムが鳴ると同時に、足早に教室から出て行こうとしていた平次を和葉が呼び止めた。
面倒臭そうに振り返った平次は、更に面倒臭そうに答えた。

「購買や購買。言うとくけど土産はないで」
「・・・・・・なぁ」
「なんや?」
「気のせい違たら、前の休み時間にお弁当食べてへんかった?」
「ああ、アレか。アレは・・・おやつみたいなもんやな。今買いに行くんは、昼メシ」
「はぁぁ?あんた、一体どんだけ食べたら気ぃ済むん!?」
「アホ、朝錬あるから朝メシ食うたん6時やで。健全な青少年の胃袋が持つわけないやろ?って、あー・・・、和葉。昼休みに個数限定の作りたて焼きそばパン、買うといてくれ。それからカレーパンとあんドーナツも。売り切れやったら適当にみつくろって、金は後で払うから」
「ちょっとまだ食べる気やの!大体なんでウチがあんたの使いっぱしりせなあかんの!?」
「昼錬のあと、腹減るやろが!時計見てみ?お前が呼び止めて下らんことぺちゃぺちゃしゃべるから、購買行く時間なくなったんやろが」
「あ・・・ごめん」

和葉は少し、しゅんとしたものの、すぐに何か思いついたらしく、ちょっと考えてから平次に向かって提案した。

「なあ、それやったら、うちが平次の昼のお弁当作ってきたげるわ!そしたら平次あわてて購買行かんで済むやろ」
「それ、ちゃんと食えるモンなんか?」
「ほんましっつれいやな!美味しかったら浮いたお金でその日なんかおごってもらうで!」
「おー、ええで。その代わり作るの忘れてきたら俺に昼飯奢りや」
「へ?それって、なんかおかしない?なんで・・・・・・」
「細かいこと気にしてたら大物になられへんで。とりあえず今日は焼きそばパン、頼んだでー」
「ちょ、ちょっと平次!!」

さらに抗議をしようとしたところでタイミングよく授業開始のチャイムが流れ、平次はひらひらと手を振りながらさっさと自分の席へと戻ってしまった。

「なんか、納得いかへんなぁ・・・・・・」

でもそれでも明日のお弁当は何にしようか、なんて考えて。
和葉は4時限目の英語にあまり集中できなかった。



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