屋上謳歌!
突き抜けるようにどこまでも高く、澄んだ青い空。
視界の端にまばらに浮かぶ真っ白なうろこ雲。
ほんのりと体を温めてくれる柔らかな日差しと、頬を滑り撫でていく少し冷たい秋の風。
秋晴れの木曜5限目、いつもの俺の指定席。
大きなあくびをひとつ。
そして食後特有の満たされた感覚に誘われるまま瞼を閉じ、心地よいまどろみに身をゆだねる。
遠く、近く、グランドの方から時折聞こえる体育教師の吹くホイッスルの音や笑い声。
音楽室から洩れ聞こえてくるピアノの単調なメロディと生徒達の歌声。
夜の闇と冷気を切り裂き駆け抜けたゆうべの出来事が、暖かな布団へと転がり込んだ明け方の事がまるで遠い昔のなつかしい思い出のように感じてしまうほど平和で穏やかな日常。
気がつけばほんとうに眠り込んでしまっていたようで、時計を見ればそろそろ6限目も終わろうかという時刻になってしまっていた。
「そろそろ、だな」
青子は授業をサボった俺を探してここに来るはず。
俺とのケンカで、しばしば授業を中断させてしまうことも少なくない彼女だけれども、存外まじめでこうやって授業をサボる事にいつも少し腹を立てているから。
ただの幼馴染。
それ以上でもそれ以下でもない、ここはそんな彼女とのほんの少しの特別。
普段は鍵がかけられていて生徒は立ち入ることができないがゆえに、ふたりだけの時間を共有できる場所。
ここでは、ふたりの微妙な距離が少しだけ縮まるように感じられるから。
―― やっぱりここにいた!んもう・・・・・・
きっと彼女はそう言って、少し頬を膨らませて怒るけれど、最後には飛び切りの笑顔にして見せる自信があるから。
そんな彼女のご機嫌をとるための貢物は何にしようかとポケットの中を探ったその時、ぎしぎしぎぎぎ、と屋上への重い扉を開ける音が聞こえてきた。