明日を待つ教室



「遅くなっちゃった・・・・・・」

PM 5:00
教室にはすでに人影はなく、一面暖かなオレンジ色の光に包まれていた。
その光と、柔らかな雰囲気と、ほのかな暖かさに包まれていたくて、そのまま教室の中で何をするでもなく佇む。
窓の外からは、部活にいそしむ生徒達の掛け声や、吹奏楽部の奏でるやさしい音色、時折金属バットの軽快な音が響いてくる。


そんなことで、彼の何かがわかるわけではないけれど。
ゆっくりと窓際の方へと歩を進め、そうっと快斗の机に手を置いてみた。

夕陽に照らされた窓側の席は、ほんのり暖かくて、でも触れ続けているうちに、ひやりとした木の感触が蘇ってくる。

もう知らなかった頃には戻れない。
うわべだけ、暖かなこの日常と同じ。

ひょっとしたら。
今日と同じ、平凡で、馬鹿馬鹿しいほどに騒がしくて、優しい。
そんな明日はもう来ないんじゃないか。
この教室から彼の姿がなくなってしまうんじゃないか。
予告の日はいつも不安になるけれど。

「んじゃな。また明日!」

そういって別れた幼馴染。
その言葉を信じて。
少し眠そうな、でも元気な笑顔に会えると信じて。

青子は教室を後にした。


また、明日。



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