雨の日



例年よりもかなり早く入梅したというのに、いつまでたっても続く雨の日々。
予告状を出さない仕事は、後の手間はぶくため、その場で確認だけして済ませていたので、ちょっとの晴れ間に期待をかけ、準備をしては、肩透かしをくらっていた。
新聞の週間天気予報を見て、思わず大きなため息をこぼした俺に、青子がにやにやと意味ありげな笑みを浮かべて話しかけてきた。

「ほんと、雨続くよねー」
「まったく、どんだけ降りゃあ気が済むんだよ」
「6月なのに、台風まで来ちゃったもんねぇ」
「ったく、商売あがったりだぜ」

くしゃくしゃと新聞を丸めてゴミ箱へとシュートする。
再度大きなため息をついた俺に、青子がずずいと近づいてきた。

「それでは、毎日ブルーな快斗君に、青子様がその名のとおりの青い空をプレゼントしてあげましょう!」
「オメーに、んなこと出来るのかよ」
「んっふっふー、青の魔術師である青子様に不可能は無いのです」
「いやいや、不可能が無いなら、まずはそのぺったんこの胸をなんとかしたほうが・・・」
「胸は関係ない!」
「おいおい、自分ことすらどうにかできねーのに、お天道様を操るとか、とりあえずムリだろ」
「じゃあ、出来たらどうする?」

青子があまりにも自信たっぷりなので、こちらとしても引くわけにはいかない。
その自信の根拠にも興味があったので、 その賭けに乗ってみることにした。

「えっれえ自信じゃねーか・・・よし、じゃあオメーの言うこと、なんでもひとつだけ聞いてやるよ」
「絶対だよ!」

青子がふーふーんと大きく鼻を鳴らし、「じゃあ・・・」と言いかけたところで、昼休みの終わりを告げるベルが鳴り始めたため、勝負は放課後へ持ち越しとなった。





帰るときになっても、まだ雨は降り続いていた。

「おーい、青い空をプレゼントしてくれるんじゃなかったのかよ」
「まあまあ、ちょっと待って。とりあえず帰ろっか」

青子はそういうと、 教室を出て、傘を手にずんずんと下駄箱のほうへと歩き出した。

おとなしく後に続き、下駄箱から校舎を出たところで、いきなり間の前に広がった、目にも鮮やかな青。
ばん、と勢いよく開かれた傘の内側が、目にも鮮やかな青色に塗りつぶされていた。
・・・スプレーで。

「オメー・・・」
「どう?」
「どう、って・・・なぁ。いやいや、常々残念な子だとは思っていたがここまでとは・・・」
「残念な子ってどういう意味!」

残念な青子の、残念な傘の内側は、確かに真っ青な青空だった。
ご丁寧に、明らかに手描きの、へったくそな白い雲や太陽までもが描かれているから、青空のつもりなんだろう。
そう言えば、この前いっしょにテレビで雨の日グッズの特集を見ていた時にこういう傘があったはず。
どうしてそれをそのまま買わなかったのか。
コイツ、絵心がなさすぎるのに、どうしてこういうことを考え付いてしまったのか・・・。

「さーって、なに聞いてもらっちゃおっかなー」
「俺にこれにOKを出せと!」
「快斗、最近付き合い悪いから、今日のこれからぜんぶ青子が予約」
「話聞けって・・・って、へ?」
「お誕生日おめでとう、快斗!」

そういうと、青子は俺の手にその傘を押し付けた。

「雨が降ってるから、もう今日はお仕事中止!でも、青子のところは晴れてるので、今日は青子だけの怪盗さんでーす」
「ったく、しゃーねーなぁ。そんなに俺の誕生日をいっしょに祝いてーのかよ」
「うんっ!」
「晴れてたら、どーする気だったんだよ」
「そのときは、ほら、こっちに雨の折りたたみ傘が用意してあるから、今日は雨降りなので、お仕事できないってことで・・・」
「アホか!」

叫んで、青子の手から折りたたみ傘も奪い取る。
押し付けられた、青い傘をさして、青子を手招きすれば、うれしそうに隣に並んできた。

「ほれ、帰るぞ」
「青子の家に、パーティーの準備してあるよ!」

二人並んで歩くのは、青子の家まで続く青空の下。
雨は好きじゃないけれど、こういう雨の誕生日は、悪くないなと思った。

 

2011/12/24

私もパソコンもリハビリちう。クリスマスなのに、誕生日の話ですみません。
今年のお誕生日にと思って書いてて、そこはかとなく佐々ちゃんとかぶったから、
そしてイロイロおかしいから、途中で放置して
お蔵入りにしちゃってたものです。
しかし、似たような素材でも、私が書くと残念な感じになるのはなぜだ・・・。


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