「ん・・・」

ぬくぬくと暖かだった布団の中、背中に感じたひやりとした感覚に、ゆらゆらまどろみに沈んでいた意識が戻る。

「かい、とぉ・・・?」
「おう」

反射的に寝返りを打とうとしたけれど動けない。
いつの間にか青子の布団にもぐりこんできていた快斗は、後ろからがっちりと青子を抱きしめていた。
腕を振りほどこうと、もごもご抵抗してみたけれど、緩まるどころか余計に懐深く抱き込まれてしまい、抵抗しようとする青子の手を押さえる快斗の手の、めちゃくちゃなに冷たさに、完全に目が覚めてしまった。

「ちょっと、なんで、なにしてるのよ」
「ナニって・・・夜這い?」
「よばーーーーん、んん・・・!」

衝撃発言に、思わず叫んで振り返ろうとしたところ、思いもかけず束縛は緩められ、唇を唇で塞がれた。
快斗のキスははじめこそ騒ぐ青子の唇を塞ぐためか深いものだったけれど、だんだんと触れるだけの優しくゆるやかなものになり、夜這い、なんて不穏当な単語を発したくせに、いつもならすぐにお尻をまさぐってくるいやらしい手も、背中から下におりてくることはなかった。
キスの合間に快斗がささやく。

「オメー、あんま騒ぐなよな・・・」
「そんなこと言われなくったってわかってるわよ。今夜は お父さんもいるし」

すぐさま重ねようとした唇をかわして言い返す。
騒ぐ気がないとわかったからか、満足したのか快斗はようやくキスをやめ、大きく息を吐いた。

「こっちだって言われなくてもわーってるよ。今夜は予告出してねーしな」



そう言った後、快斗はふたたびぎゅうと青子を抱きしめた。

「あったけー」

青子の頬に重ねられた快斗の頬は、まだひどく冷たくて、少しでも暖めてあげたくて、そろりと背中に腕を回す。

「お、その気になってきたのか?」
「ち、違うわよ、バ快斗!セクハラ!」
「安心しろ、今夜はなにもしねーから」
「あったりまえでしょ・・・」

大きなため息をついた青子を見て、快斗はにやりと笑うと、また唇を重ねてきた。

「前言撤回。キスは、する」
「えっちー」
「えっちじゃねえよ。挨拶みたいなもんだろが」
「挨拶だったら、誰にでもするんだ」
「バーロ、オメーにだけだっつの・・・・」

くすくすと笑いながらキスを繰り返す。
いつの間にか、布団も快斗の頬もまたもとの暖かさを取り戻していた。

 

2011/04/20


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