さみしい



―― だって、好きな子からのメールがはいってるんだもん。

言われた時はあまり感じなかったのだけど、後になってその言葉にすくなからずショックを受けている自分に気づき、思わず くすり、と笑ってしまった。

コナン君は、わたしのことスキなのかも、って。
なんかそんな風に思っていたから。


― 蘭っ!!


普段はかわいらしく「蘭ねーちゃん」なんて呼ぶのに、私がピンチの時には、ちゃんと男の子の顔をして、いつも手を差し伸べてくれた。
その手は、ほんとうはちがう誰かの手をつかみたかったんだなと思うと、ひどくさみしかった。

子供が出来て、それが男の子で、好きな子がいるんだって打ち明けられたお母さんって、こんな気持ちなのかな?

それとも ――?

いつのまにかコナン君は私の中でとっても大きな存在になってた。
新一がいなくなって、寂しくて悲しくてたまらなくて。
そんなとき、いつも そっと寄り添うようにいてくれて、どんどん暗い方へと転がっていこうとする気持ちを連れ戻してくれた。
だから、寂しいけど大丈夫だった。

時折見せるするどい指摘や大人びた表情。
まるでちいさな新一みたいで、新一の代わりをしてくれているみたいに、いつも精一杯私のこと守ってくれて。
ふとした時に重なる新一の影に、ありえないと思いつつ、新一じゃないか、って疑ったこと何度もあるけど・・・





「蘭ねーちゃん、お風呂・・・ってどうしたの?」

ずいぶん長い間ぼんやりしていたみたい。
部屋に入ってきたコナン君にも、全く気づかなくて、もちろん、やりかけの課題もそのまま。

「ううん、なんでもないよ。ごめんね」

うまく、笑えてなかった。
どうしちゃったのかな、わたし。
コナン君の顔が心配で曇る。

「課題、難しくて進まなくって。気分転換しようと思ってたからちょうどよかった。お風呂、いただいてくるね」

雰囲気を変えようと勢いよく椅子から立ち上がり、コナン君の横をすりぬけようとしたところで、袖をつかまれ、ぽつりとつぶやかれた。

「大丈夫だよ。新一兄ちゃんは絶対帰ってくるから。それまで、僕が蘭ねーちゃんのそばにいるから」

また新一のことを考えてると思ったんだ。
でも。
コナン君の「それまで」というところに、ひっかかるものを感じてしまった。
また、むくむくと湧きあがる不安。
どうしよう、わたし、こんなにも置いて行かれることが怖い。

「じゃあ、コナン君は、新一が帰ってきたらいなくなっちゃうの?」
「蘭ねーちゃん?」

自分がひどく寂しい声を出してる事に気づいているけれど、言葉が、とまらない。

「いやだよそんなの。新一が戻ってきたって、コナン君がいないのは、いや。コナン君はコナン君だから。新一もコナン君も、だれもどっちも代わりになんていないんだよ?だから・・・」
「あの、僕・・・」
「あ・・・ごめんね、へんなこと言っちゃって」

そういって笑ったけど、なにか心の隅にごりごりとしたものが残った。
だって、その時のコナン君は、うん、って少し笑っただけ。
何か言いたそうな、苦しい顔をしてるように見えた。

いなくなっちゃうの?
置いていっちゃうの?
わたし、そんなに強くないよ。
どうしてみんな置いていくの?

こぼれそうな涙をおさえるために、ぎゅっと一度強く目をつぶって、そのままお風呂に行こうとしたら、今度は手をとられた。

ぎゅぅっと、強く。
言葉はなかったけど、いま、ここにいるって主張しているみたいに。

・・・そうだよね、いま、この瞬間私は、ひとりじゃない。
ありがとう、わたしもそばにいるから。
そんな気持ちを込めて、つながれた手をぎゅっと握り返した。



祝!江戸川コナンの日!!2004

蘭ちゃんは、コナン=新一と疑うことはあっても、絶対かわりとしては扱ってないですよね。
私の中でも、同一人物のはずなのになんか別の人って認識があって(苦笑)
でもあたりまえですが、新一に戻ったらコナンはいなくなっちゃうわけで・・・。
で、さらに蘭ちゃんは置いてけぼり度高いなーなんてかんがえてたらこんなのでてしまいました。
コナン君、いなくならないでフォーエバーっ!!
コナンはずっとこのままで、ヤンサンでしれっと別途「工藤新一事件ファイル」とかやってくんないかなー。

私のコ蘭の基本って暗いようで。。。せっかくの企画モノにこういうの出して、すみませんでした。
これの反省を生かして、ほのぼのコ蘭目指して修行します。

ミシマナミ


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