テレビジョン
『Ladies and Gentlemen!今宵の前夜祭にようこそ・・・』
「なぁぁぁぁ〜にが前夜祭よっ!」
テレビからは、ヘリコプターの轟音をBGMに、世紀の大怪盗がショーの開始を告げる声。
テレビの前で悪態をついている青子の目の前には参考書が山と積み上げられていた・・・。
事の発端は鈴木財閥の相談役からの挑戦状。
勢いで受けてたったものの、準備期間が短いうえに、通常以上に念入りな準備が必要と来た日には、快斗の忙しさは、そりゃもう殺人的としかいいようがなくて。
父親の手前、見てみぬふりをしていた青子だったのだけれども、毎日のように授業中に眠り、疲れを隠せない快斗を見かね、思わず「何か青子にできることはない?」と聞いてみたところ。
「んー、宿題?」
居眠りばかりしているくせに、いざ、当てるとスラスラ答えてしまう快斗に、なんとか学習意欲を持たせよう、と教師達が考えた苦肉の策として、毎日大量の宿題が出されていた。
さすがのIQ400も、量をこなすにはある程度の時間を要するはずだから、いやでも、勉強する習慣が身につくだろうということらしい。
普段ならばぶうぶう言いながらも、それなりにこなせてはいたのだけれど、さすがにさばききれないようで、うっちゃってしまいたいのはやまやまなのだろうが、そこは学生の悲しさ、やるしかなくて。
泥棒のお手伝いはできなくても、それくらいなら青子にもできるかも、と中身を確認もせずにそのまま受け取ったのだけれど・・・。
量もさることながら、快斗用の宿題は難問ぞろい。
青子だって、同じ年頃の子に比べれば、決して勉強ができないわけではないのだけれど、一問解くのに、ものすごく時間がかかる。
そんなわけで、青子はテレビの前で一人、2人分の通常の宿題に加え、快斗のバツ宿題に頭を悩ましているのである。
テレビから、ひときわ大きな歓声があがり、視線をノートからテレビへと移せば、闇夜に白く浮かぶ怪盗の姿が映し出されていて、悔しいけれど、ちょっとカッコいいななんて思ってしまって。
青子も、あすこで生で見てみたかったなぁ、なんて思うと、さらなる怒りがふつふつと湧き上がる。
「ああもう。大体、あんな危ないことするなんて聞いてないし!快斗、今日のことについては聞いても教えてくれなかったし!帰ってきたら文句のひとつでも言わないと、気がすまないんだからぁ!」
口は動くけれども、頭と手は動かず、文句は増えるけれども、宿題は減る様子もなくて。
青子の夜はまだまだ長そうである。