欠片
ぐぅ、と小さくおなかが鳴る。
小腹がすいたなぁと、問題集から目をあげ、うーんと伸びをひとつ。
壁の時計の針は、まだ10時を指したばかりだった。
「ほんとにまったく・・・・・・貴女と言う人は・・・人の話を・・・聞いては・・・いただけないようですね・・・」
コンビニからの帰り道、わたしの手にはほかほかと湯気のあがる、白くてふかふかの肉まん。
目の前で、小言を言っている彼の手にも、おすそわけした、ほかほかふかふかの黄色い物体が握られていて、もぐもぐしながらでなので、お説教の効果はまったくなかった。
「ん、もう!ほんとにうるさいわね。お父さんみたい」
「心外ですね、わたしは警部ほど年では・・・」
そこまで言って、キッドは言い澱んだ。
そういえば――
「そういえば、キッドっていくつなの?」
今更だけど、青子はキッドのことほんとうになにも知らない。
考えてみれば、ほんとうの年齢すら知らないのだ。
こうやって、ひとつづつキッドのかけらを集めて。
最後に現れる彼は、いったいどんなかたちをしているのだろう。
2012/04/05