仲良し




「べつに青子がイヤだというわけではないんだ、ただやっぱり男の子は違うと思うんだ」
「オレもそう思いますよ」

熱弁をふるう警部の頬は、すでにほんのり赤くなっている。

「青子が酒に弱いとか、それ以前の問題で、こうやって一緒に飲むとか、考えられんだろう?」
「ですよねー。オレも母親と飲むとか、絶対ないですから」
「それにな、快斗君のように、息子が父親の跡を継いで、というのも正直羨ましい」
「オヤジはオレの憧れで、目標です」
「そういうのがな・・・親子2代で刑事というのも悪くないだろう。まあ、キッドに関してはワシの代でカタをつけるつもりだがな!」
「・・・・・・がんばってくださいね」
「青子とキッドを追うなんぞありえんし、かといって、ワシの部下に青子を任せられるような奴はおらんし・・・」
「そうですよ、警部。 どこの馬の骨ともわからんような奴に青子をやるなんてダメです」
「馬の骨ではないが、あれだ、あの警視総監の息子、ああいうのも、イカン」
「ですよね!」
「そこで、だ。快斗くん」
「・・・はい」

ごくり。
真剣なまなざし、がらりと変わった口調。
大きく鳴った喉は、ビールを飲み込んだからと言うだけではない。
気まずい沈黙の後、警部は大真面目な顔のまま、ずずいと額を寄せてきた。

「マジシャン刑事、というのはどうだろうか」
「マジシャン・・・デカ・・・ですか」

張り詰めた空気が緩み、体から一気に力が抜ける。
にやり、と笑ってビールをあおった警部は確信犯だ。
この一瞬で、からからに渇いてしまった喉には、生ぬるくなったビールでもうまかった。

「そしたら君に青子をやろう!君にだったら安心して任せられるからな!」
「もうお父さん!酔っ払ってバカな事言ってないでよ!快斗も困ってるでしょ!」
「わかりました。頑張りましょう、警部!」
「よし、ではワシといっしょにだな・・・」
「んもう、快斗まで!ナニ勝手に決めてるのよー!!!」

つまみを運んできた青子は、すでにとっくに俺のものだったりするけれど、警部はまだ知らない。
親父が生きていたら、こんなかんじだったのかもしれないな、なんて思いながら未来の親父とバカ話しながら酒を飲むのは、ほんとうに楽しくて、できれば手放したくない幸せな時間だ。

 

2010/09/20


まじっく刑事でも可。土ワイにありそう。こういうバカっぽいの書いてるのが、いちばん楽しいです。


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