もういいよ。



「あれ?」
「なんだ?」

キスの後、なんだか違和感を感じて、ちょっと首を傾げた私を快斗は不思議そうに眺めた。

「快斗、タバコ」
「ああ、やめた」
「やめた?」

びっくり顔の私に苦笑をひとつ。
だって、未成年だし、身体に悪いし、といくら言っても、のらくらりとやめずにいたのに。

「もう、いいんだ。終わったし、必要ねーから。青子だけで、じゅーぶん」
「終わった?」

ますます訳がわからなくて、うーんと考え込んでいると、またちょっと困ったように笑う。
いつもの、からりとおひさまのように笑う快斗の笑顔じゃない。
違和感を感じて黙り込んだ青子の顔を、やっぱりちょっと困ったように見つめていたけれど、にやりといやらしい笑みを浮かべた後、青子の鼻先に唇を寄せてきた。

「そうだ、やめたらオメーからキスしてくれるんじゃなかったっけ?」
「もう、そういう事ばっかり覚えてるんだから・・・」

そんな快斗の唇に、軽くキスをひとつ。
それからもう一度、今度はゆっくりと唇を重ねた。

不思議、タバコ味じゃないキスはなんだか物足りなくて。
ちょっとさみしいかな、なんて思ってしまったことは、ナイショにしておこう。


2006/06/14


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