とっておきの、パーティーへの招待客は1名様。



今日は快斗の誕生日。

青子の誕生日パーティーに来てはくれなかったけれど、すっごく嬉しいプレゼントをくれたから。
今度は青子が快斗にサプライズを贈ろう、そう決めたのに。

「じゃーんっじゃじゃーん。はーっぴばーすでーかーいとー!」

朝っぱらから机に突っ伏し、惰眠を貪りまくる快斗に真っ白な封筒を差し出す。

「ハイハイ、さんきゅーな。ってことでオヤス・・・」
「ちょっとちょっと!!中味も見ずに片付けないでよね!」

青子だって今日のこの日のため、あれこれ準備していたから、かなり寝不足なのに、快斗は面倒くさそうに顔を上げ、無造作に封筒を受け取ってまた寝ようした。
青子のテンションは高すぎたかもしれないけれど、それでも誕生日プレゼントをもらった者としての快斗の反応はいただけない。
あわてて机に、ばんっ、と手をつき、「快斗さーん」と無理やりに起こすと、快斗はしぶしぶ顔を上げた。
頭は机にくっついたままだったけれど。


「あーもー、ウルセーなー。んだよ、コレ」
「お誕生日パーティの招待状でーす。今夜青子の家で快斗のお誕生日会が催されマース。いっつぁサプライズパーティ!驚いた?」

用意していた台詞を一気に吐き出すと、下がりそうになっていたテンションがまたあがってきた。
でも、驚くかな、喜んでくれるかな、と快斗の反応をあれこれ想像して、次の台詞も用意していたのに、快斗の口から出たのは、全くもって予想していない言葉だった。

「あー、悪ぃ、パス」
「へ?」

頭の中には、ほんとうに「へ」と言う文字しか浮かばず、快斗の言葉はちゃんと聞こえていたけれど、言葉の意味が理解できなくて、快斗の後頭部を見下ろしたまま、固まってしまった。
快斗は聞こえなかったと思ったのか、さらに追い討ちをかけてきた。

「だから、今日はムリ」
「ムリって・・・ええええぇぇぇぇええぇー!ちょっと、主役不在なんてダメだよ!」

思わず叫んでしまって、クラスの注目を一身に浴びることになってしまったけれど、そんなことは気にしていられなかった。
この日のための準備が全部無駄になるなんて、しかもそれがお祝いされる本人に拒否されるだなんてありえなさすぎる。
さすがの快斗も、私の剣幕に押されたのか、相変わらず眠そうだったけれど、机から顔をあげてくれた。

「そこは普通、大喜びして『ありがとう』って言うところでしょ!」
「んなこと言われたって、こっちにも都合があんだよ。だいたいこっちの予定も聞かずに勝手に予定立てたのそっちだろが」
「事前に予定聞いたらサプライズにならないじゃない!そもそも、いったい、なんの用事なのよ」

快斗の交友関係のすべてを知ってるわけではないけれど、快斗が仲良くしていると思われる人は、みんなこのパーティに関わってくれている。
それなのに、パーティに来れないっというのは、どういう訳なのだろうか。

「ああもう、なんでもいいじゃねーか」
「よくないよ!理由くらい教えてくれてもいいじゃない」

ここしばらくは、青子もこの準備で忙しくしていたので気にしていなかったけれど、快斗は付き合いが悪くなっていた。
だからこそ、物を贈るだけではなく、楽しい時間を、思い出を共有したかったのに。

なるべく表情には出さないようにしたけれど、心にちくりと小さな棘が刺さり、快斗との間に微妙な空気が流れる。
それはほんの一瞬のことだったけれど、事の次第を見守っていたクラスのみんなが、ここぞとばかりに快斗に質問攻めを始めた。

「言えない用事なんて・・・怪しいわね」
「実は青子と二人がよかったとか?」
「んなわけねーだろ、なんで俺がコイツと・・・とにかく先約があんだよ」
「なになに、先約!?」
「誕生日のお約束の定番と言えばデートだよな!?」
「でえとなのぉ!?」
「キャー!」
「中森というものがありながら!」
「青子はただの幼馴染だっ!」
「だったら相手は誰だよ」
「あー、もう誰でもいいだろが」
「デートの部分は否定してませんよ、この人!」
「ああ、もう、ちげーよ!」

クラスのほぼ全員がこのパーティに関わっているのだから、気になるのだろう。
教室は一瞬騒然となり、快斗はぐるぐるとみんなに取りかこまれ、うんざりした顔でそっぽを向いてしまった。


「とにかく!B組が一丸となって黒羽を祝おうって言ってるんだぜ」
「大人しく祝われちゃいなさい!」
「そうそう、みんなでマジック寸劇の練習だってしてたんだよ」
「マジック寸劇ねぇ・・・」

ここでちょっとでも興味を持ってもらえればしめたもの。
もういいだろ、という風に、また机と仲良くなろうとする快斗の頭をあわてて持ち上げる。

「うん、主役は快斗で青子がやるんだよ。青子役はなんと白馬君なんだ!」
「白馬ぁ!?」
「残念ですね、僕の可憐なスカート姿をお見せできないなんて」
「オメー、本っ気で言ってんのか」

いつの間にかそばに来て、楽しそうにくつくつと笑う白馬くんに、心底いやそうな視線を向けた快斗は、もう寝るのはあきらめてくれたようだったけれど 、いまだに参加しないという気持ちは覆らないようだった。
ただ、劇の内容にはちょっと興味を持ってくれたようで、快斗のほうから話をふってきた。

「その寸劇って、どんなんなんだよ」
「見てのお楽しみでーす。ここで話しちゃったら意味ないじゃない」
「いやだから、お誕生会はパスだって言ってんだろうが」
「うーん、仕方ないなぁ、よし、じゃあ快斗が見たくなるよう、トクベツに少しだけあらすじを話してあげちゃう。えーっと、スカートめくりしまくる快斗が、正義の味方青子さまに追い詰められて、俺は実は火星人だー、なんて言って、教室に巨大な火星人とUFOが・・・・」
「それ、祝ってねーから!俺が悪役でしかも巨大な火星人って、わけわかんねーんだよ!だいいち俺は誰彼かまわずスカートめくらねーし、そもそも青子ごときに追い詰められるわけがねーだろが」
「あら、わけがわからないなんて失礼ね。このわたくしが火星人を用意して差し上げましたのに」
「オメーまで、なにやってんだよ!」
「とにかく、他にも色々、すっごい練習したんだよ?クラスのみんなだって・・・」

快斗は仕方ねーなと言う感じで大きくため息をついて、相変わらず隣でくすくすと笑っている白馬君をにらみつけていた。
そうだよ、青子だけならとにかく、白馬君や紅子ちゃん、クラスのみんなにだって準備を手伝ってくれているのに、パーティに主役がいないなんてゼッタイにダメなんだから。

みんなもなんとかパーティに参加できない理由を聞き出そうと、あの手この手で質問攻めにしていたたけれど、快斗は口を割らなかった。

結局、快斗が来れない理由は聞き出せないまま授業が始まってしまい、次の休み時間にもう一度問い詰めようと思っていたのだけれど、いつの間にか快斗の姿は教室から消えていた。










教室にかばんが置き去りにされていたので、戻ってくるかもとギリギリまで待ってみたけれど、快斗が教室に戻って来る事はなく、主役が拒否不在では、とパーティは中止になってしまった。


のろのろと家に帰りつくと、あたりは薄暗くなりはじめていて、リビングに早めの明かりを入れると、目に飛び込んできたのは、所狭しと飾り付けられた、ぴかぴかキラキラのモールや色紙で作った鎖、誰がどこから持ってきたのかわからない万国旗たち。
部屋の隅では見てもらえなかったマジック寸劇の残骸が幅を利かせており、台所には朝早く起きて焼いたまま、デコレーションされていない4ホールぶんのスポンジケーキがででんと置かれている。
冷蔵庫には、大量の鶏肉や野菜がぎっしり詰め込まれているし、サンドウィッチ用の食パンの量もハンパではない。
アイスにいたっては、リットル単位で買ってしまっている。

どっと疲れが押し寄せてきて、部屋を片付ける気にも、夕飯を作る気にもなれず、ソファに座ってテレビをつけると、ちょうどお父さんのアップとご対面してしまった。
お父さんの後ろには、なにやら蛸のような巨大な生き物の姿があり、どうやらキッドが警察を撹乱するために仕掛けていたものらしかった。

今日はキッドの予告の日なので、お父さんはいない。
今日に限って言えば、この状況を見られなくて、いなくてよかった、と心から思う。

そういえば、青子の誕生日にもキッドは仕事をしていたはずだ。
あの時も、快斗は「パーっと盛り上げてやっからよ!」なんて言っていたけれど、結局パーティには来なかった。
快斗がパーティに来なかったのは、来ないのは、べつにキッドのせいではないのだけれど、大事な日にかぎって予告状を出しているキッドに、無性に腹が立ってきた。

かなり長い間ぼうっとしていたようで、時計を見れば、針は9時少し前を指していて、テレビには、お父さんの悔しそうな後ろ姿が映っている。

「ばかばか、キッドのばーか」

テレビに文句を言ったところで、なんの解決にもならないのはわかっていたけれど、このままここででひとり片付けする気にもなれなくて、思わず口をついて出た悪態。
それは、当然キッドに聞こえるわけもなく、空しさが増すだけだった。


おおきなため息のあと、うーんと伸びをひとつ。
テレビを消して、ソファから勢いよく立ち上がり、出かける準備をするべく、台所へと向かった。



 


「全く、こんな日に予告を出した上に、こんな時間まで追いかけっことは・・・つくづく因果な商売ですね」

そう言って、目の前に立ちはだかったのは、今夜の仕事を因果な商売に変えた張本人であり、昼間不穏当な発言をしていた同級生であり、本人だけ曰くのライバルであるところの、警視総監のご子息だった。
ふう、とこれみよがしに大きなため息をついているけれど、ため息をつきたいのはこちらの方だ。
なぜかって、 その姿は、ド肝を抜くようなものだったから。

「・・・ひとつだけききたい・・・・なぜ、こんなことを・・・」
「ああ、あなたに華麗なスカート姿をお見せできなかったのでね。ドイルはスコットランドの産まれです。私は彼の、ホームズのすべてをリスペクトしていますから・・・」
「ちょっとリスペクトしすぎだろ」

くるり、と綺麗にまわれば裾が揺れる。ちらりとのぞく絶対領域がまた、オレの気分を急降下させる。
いつもの正装(注:シャーロックホームズのコスプレもどき)もどうなんだろうか、と常々思っていた所に、今日はそれに輪をかけた奇天烈さ、いわゆるひとつのスコットランドの民族衣装を着用しているのである。
どうして日本警察は、コイツを逮捕しないのだろうか。
昼間ならとにかく、もう日付も変わろうかと言う時間では、丘の上の王子様ならぬ、ビルの谷間の変質者としか形容のしようがなかった。

「バっ快斗ぉぉぉ!!」

ぐらり、不意打ちの物まねの、あまりのあんまりさに、視界が眩暈でくらくらする。
いや、確かに女子っぽい声ではあるけれども、やっぱりどう聞いても白馬の声であって、それでその呼び方をされるのは、もうどうしようもないくらい不愉快だった。

「おやおや、これもお気に召していただけないようですね。かなり練習したのですが・・・」

どこでだ!と叫びだしたいのをぐっとこえらる。
こちらの反応に、本気なのかイヤガラセなのか、もうそれすら判別がつかないくらい、心底残念そうな顔をしているのは、どういうことだろうか。
もうこれ以上会話を続けたくも無かったし、正視するにも耐えなくて、視線を斜め後ろへと彷徨わせれば、さらなる追い討ちが待っていた。

「バグパイプが気になりますか?このリードを振動させて音を出すのですが、そうですね、ちょっと吹いて差し上げましょう」

冗談ではない!
こんな所でそんなド派手な楽器を演奏された日には、あっと言う間に注目の的だ。

「非常に残念ですが、今夜は遠慮しておきましょう。かわいらしい妖精でも呼んでいただけるなら、ゼヒお願いしたいところですが」
「残念ながらバグパイプで妖精を呼び出す方法は知らないので、そうですね、中森警部でもお呼びしましょうか」

最大級の悪意をこめて投げつけた言葉は、軽くかわされ、むしろさわやかな笑顔と更なるダメージを与えられると言うサイアクの結果になってしまった。
妖精と言ってもきらきらひらひらのばかりではないとはわかっているけれど、妖精姿の警部を想像してしまって、さらにげんなりする。
と、そこで突然、白馬がくつくつと笑い出した 。

「とまあ、戯言はこのくらいにして、とにかくあなたは早く帰ったほうがいいですから、今夜はトクベツに見逃してあげます。僕からのささやかなバースデープレゼントです。警部もお呼びするまでもないでしょう。どうせ後で会うでしょうからね」
「何のことをおっしゃっているのかわかりませんが、とりあえず好意は素直に受け取っておきます。まあ、そんなことしていただかなくても、貴方に捕まるとは思えませんが」
「ちなみに僕の誕生日は8月ですから、そうですね、夏休みにあわせて心踊るような予告状をお願いしますよ。それでプレゼントと言うことに」
「んなもん、ぜってー出すか・・・」

最初から最後まで、まったく人の話を聞く気が無い男の気が変わらないうちにと、小さく捨て台詞を残して、俺は可及的速やかに、その場を立ち去ることにした。



 


向かった先は、快斗の家。
ここ最近は雨ばかりだった というのに、今夜はやたらに月がきれいで、夜の街は生暖かい湿った空気に混じって、濃厚な葉っぱのにおいでいっぱいだった。
湿った空気と気持ちを振り払うように、ぐんぐん歩いていたら、背後から声をかけられた。

「オメーはこんな時間に、んなとこでナニやってんだよ」

振り返らなくても、不機嫌な声の主が待ち人であることは間違いない。
でも、不機嫌なのはこっちだよ。

「待ちぶせしようとしてました」

くるりと振り返り、両手に提げた大きな箱の入ったビニール袋を、快斗の前に無言でずいっと突き出すと、快斗は少し驚いたそぶりを見せたものの、素直に箱を受け取った。

「・・・・・・これは・・・」
「ケーキ」
「ケーキ?」
「うん、バースデーケーキ。責任とって食べてもらおうと思って」
「これ、全部ひとりで食えってか!?」
「そう。残すのは不可だからね!」
「いやいやいやいや、普通にムリだろうがよ。10号くらいあるように見えるんですけど」
「ちゃんと紅茶も持参してきたから大丈夫。ミルクと砂糖もたーっぷり入れてあるから」
「準備のよいことで」

そう、準備は、万端だった。たったひとつをのぞいては。

「パーティだって、準備はバッチリだったんだよ」

つぶやいた声は、少し震えていたかもしれない。
快斗はそれ以上は何も言わず、おもむろに青子の手からケーキの箱を奪い取ると、てくてくと、今来た道を戻り始めた。

「ちょ、ちょっとどこに行くのよ」
「どこ、ってオメーが渡したんだろが」
「へ?」
「会場、オメーん家なんだろ?」

青子の手にひらりと舞い落ちてきたのは、招待状。

「行くって期待させといて、来れないよかいいだろと思ったんだけどな。青子ん時はそうだったし・・・」

青子の時『は』来れなかったから・・・。
朝のあの態度も、快斗なりに色々考えていてくれていてのことだったのだと、そして残りわずかな時間を、青子と過ごしてくれようとしている事が嬉しくて、思わず後ろから快斗の首に抱きついてしまった。


「ごめんね、快斗!」
「うわ、こら!こんなとこでいきなり抱きつくなよ!ケーキ!ケーキ!」

あわてて青子を引き離そうとする快斗の首根っこをぎゅうぎゅうと押さえ込む。
観念したのか、大人しくなった快斗の耳に、せいいっぱいの気持ちをこめていちばん贈りたかった言葉をつぶやく。

「お誕生日、おめでとう」
「おう、ありがとな」

触れた首筋から頬に熱が伝わる。
ほれ、時間なくなるだろが、とやんわり促され、しぶしぶ腕を解き、また並んで歩き始める。

「でも、ほんとうにごめんね、今日は中止になっちゃったから、準備完了して状態ないの。それにサプライズパーティがプレゼントだったから・・・プレゼントが、ないの。デコレーションできてないケーキなら、まだ2つほどあるんだけど」
「いやだから、それはムリだろがよ。しかもデコレーションしてねーって!」
「寸劇だってひとりじゃできないの」
「あー、それこそもう、さっきそれっぽいの十分堪能してお腹いっぱい・・・」
「快斗お芝居見に行ってたの?」
「いや、まぁ、こっちの話だ。とにかくプレゼントはいーから」
「いくないよ!」


青子は、パーティがしたかったわけじゃない。
快斗をお祝いをしたかったのだ。
だから、 パーティができなくなったのが悔しかったんじゃなくて、快斗が生まれた日をいっしょにお祝いできなかったことが悔しくて、青子の一方通行の気持ちだったんだって、快斗は青子に祝ってほしいわけでは、なかったことが悲しいくってすねてみたりもしたけれど、 快斗におめでとうの気持ちを伝えるのはムリだと思っていたから、来てくれたことが嬉しくて、その気持ちとおめでとうの気持ちをなんとか快斗に贈りたい。
けれど、それをどうやって形にしたらいいのかがわからない。

途方にくれた青子に、快斗は、大きくため息をつくと、ケーキの箱を一旦手放し、ゆっくりと青子の頭を撫でながら、ぼそぼそといった。

「青子の気持ちは十分もらったから、もうそれで十分だから」
「そんなので、いいの?」

おめでとうの気持ちなら、もうめいっぱい、あふれるばかりに持っている。
快斗にあげたいものはまさにそれで、言葉で、態度で、表現しているつもりだけれど、そんなんじゃ全然足りなくて、もっと全部あげたいって思っているのに。

「オメー、わかってねえのな」

そう言って、快斗はまた大きくため息をつくと、唐突にすごい力で青子の事をぎゅーっときつく抱きしめ返してきた。

「ちょっと快斗、苦しい、苦しいって!」
「先に抱きついてきたのはオメーだろうが」

そう言うと、今度は青子が首根っこをつかまれ、頭を髪をぐっしゃぐしゃにされた。

「んもう、快斗ー!」
「とりあえず、まずは青子ん家行こうぜ。ほれ、早くしねーと今日が終わっちまう。快斗さまがパーっと盛り上げてやっからさ」
「んもう、主役が盛り上げてどうするのよ。大丈夫、青子がパーっと盛り上げます」
「それではよろしくお願いします、青子さま」
「うむ、じゃあまず・・・ケーキ食べよっか。さらにウルトラスーパーゴージャスにデコレーションするからね!」
「今からかよ!」
「じゃあ、スポンジだけ食べる?スポンジだけでも美味しいよ」
「いやもう、それはほんとうに結構です。つかムリです、スミマセン」
「そう?ケーキ食べたら、青子がマジックショーやりまーす」
「オメーにできんのか!?」
「シッツレーねー!快斗役するのにちょっとは練習したんだよー?」


ケーキと部屋の飾りつけ以外なにもない。
でも、たった一人の招待客さえいてくれれば、じゅうぶん。
あなたがいれば、あなたさえいれば、もうそれだけで楽しい時間がはじまるから。


「パーティへようこそ、快斗」


そう言って玄関の扉を開けた青子の頭に落ちてきた手は、やっぱりとても優しかった。

 


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快斗、お誕生日おめでとうでした!

そして、ここまで読んで下すった皆様、ありがとうございました。
いつものことですが、はじめに意図したものとは、途中からどんどん変わってしまって、コメディっぽいのと、切ない感じのと、ちょっとラブっぽいのいれたいな!なんて欲張ったこと考えた挙句が、どれも中途半端に終わった感満載です・・・もっと自分の能力の限界を知れよな!みたいな。

とにかく時間と、なにより集中がなかったために、こうやって分割してアップするハメになってしまいましたが、書いてる本人は非常に楽しかったので、少しでも楽しんでいただけたのなら幸いです。 ( うーん、でも自分のサイトに再アップするときは、2はだいぶ書き足すかな!)

最後に、主催のsaoriさん、企画に誘ってくださって、ほんとうにありがとうございました。


ミシマナミ

20100621


再アップにあたって、2話目に当たる部分を大幅に加筆修正しています。
書きあがってから、この青子はちょっと、いやだいぶ好きくないな・・・なんて思ったのですが、書き直す時間が無くて、そのままアップしたものの、やっぱり納得がいかなかったのでした。

20101125