練習中
「じゃあ、さ。練習しようぜ、練習」
「は、はあぁ〜?だからどうしていっつもそういうこと思いつくの!?」
「ホレ、いくぞ〜、目ぇとじんなよ〜」
「ちょっと、青子の話を聞いてるの!?」
青子の訴えを無視して、どんどんどんどん近づいてくる瞳。
15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5・・・
そんなこと言われても、やっぱり、ムリ!
ぎゅーっと目を閉じた瞬間、快斗の気配がすっと離れるのがわかった。
そろそろ目をあけると、目の前では快斗が「5センチってとこか・・・」と、ぶつぶつと独り言を言いながら、とびっきり、わるだくみしてる時の顔をしていた。
なに考えてるんだろう・・・。
この顔してるときの快斗は、次から次へとろくでもないことばかり思いついて、実行しようとするんだもん。このまま終わるはずがない、絶対に。
だから、何が起こっても大丈夫なように、体をかたくして身構え、快斗から視線を離さないようきつと睨みつける。
でも、本人には絶対いえないけれど、この顔をしているときの快斗は、ちょっとかっこいいんだよね。
睨んでいたはずなのに、いつの間にかぼうっと見とれてしまっていて――
ごつん
「ひゃっ!」
突然、額に走る鈍い痛み。
「な、な、な、な」
「お前、さ」
「な、なに」
「熱はかる時、いっつもこうやってるけど平気だよな?」
「うん、そりゃまぁ・・・」
「今も平気だし、なにが違うんだ?」
「は?」
「口とデコと。距離だと5センチくれーしか離れてねーし、顔の距離は、断然こっちの方が近いぜ」
「そんなの!あたりまえでしょっ!!」
その瞬間、ニヤリって、すっごい、意地悪に笑って。
唐突に近づいたくちびる。
当然目なんか閉じれなくて。
「やればできるじゃん」
――してやったり。
そんなかんじで、快斗はとてもとても満足そうだった。
2004/12/14