おかえり



「キッド・・・どうして?」
「誓ったはずですよ・・・。もう一度この桜が季節を彩る頃、あなたの許へ帰ります、と」

あの時も、やっぱりこんな風に散り初めた桜の中だった。
繋ぎ止める言葉も術も持たない、ただ黙って見送るしかなかった青子にくれた約束。
青子だって、あの時の、あの言葉を忘れたことなんて、なかった。

「・・・おかえり、なさい・・・」

零れ落ちそうになった涙を見せたくなくて。
膝を折って青子の指先に口づけたキッドの頭をふわりと胸に抱きこみ、そっと髪に口付ける。

桜と・・・お日様の香り。

肩口にまわされた腕のぬくもりが、力強さが。
もう、闇へと帰って行かなくてよいのだと。
帰る場所は、ここなのだと教えてくれる。

「ただいま・・・青子」

帰還を告げる声は、もうキッドのものではなく、大好きな幼馴染のものだった。


saraさん宅の桜祭りに


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