キラキラヒカル



待ち合わせは朝の6時、完全防備の冬支度。
まだうす暗い冬の朝、家の前で平次を待つ。

外に出て、何分もたたないうちに、バイクを押した平次の姿が見えた。

曲がり角まで走っていって、そのままいっしょに1号線の方に向かって歩く。
こんなところでエンジンをかけるわけにはいかないから。

空にはすでに春の星座が昇ってきていて、私達の吐く白い息のむこう、ちかちかと瞬いている。
少し白み始めた空。

夜明けまでは、もう少し。





「よっしゃ、ほんなら行くで」

少し広いバス通りに出たところでそう言うと、平次は勢いよくエンジンをふかす。
タンデムシートにまたがり、しっかりと平次に抱きつくと、ほんのちょっとやけど、暖かくかんじる。
背中にぴったりくっついてると、エンジンの音とメットに阻まれ聞こえるはずはない平次の心臓の音が聞こえるような気がする。

1号線に出ると、ほんの少しの間、淀川の土手沿いを走る。
ジョギングをする人や、犬の散歩をする人の姿がちらほら見える。
ここから見る夕焼けも大好きやけど、今日の目的はもっと特別。


早朝の町は、夜とはまるで別の町みたい。

夕暮れ時だって、おんなじような薄闇やのに、道一面に赤いテールランプと、ぴかぴかのヘッドライトの川が出来る。

普段は車であふれかえる1号線も、この時間帯はまだまだ交通量が少ない。
まだらに流れる車の赤いテールランプをすいすいと追い越し、バイクは北へとぐんぐん走る。


バイクの後ろに乗せてもらうようになって気づいたこと。
車の時とは全く違って見える町の色。
バイクで見る町の景色は、なぜだか色鮮やかで
ほっぺたを突き刺す風には、スカイライトのフィルターがついてるみたい。



右手に巨大なジャンクション。
そこから先は、ずっとまっすぐに続く道。
橋の手前は、ほんの少し勾配になっていて、登りきった先、橋の上から眺める景色は ――


川面一面に広がる、黄金色のじゅうたん。
風にさらさらとなびくススキと朝露が朝日に反射して輝く。
白と黄色と桃色と・・・いくつもの色がまじりあってできる黄金色。
容赦なく吹きつけてくる冷たい風にのって、なんともいえない朝の川のにおいがする。



はじめてみたときの感想は「ナウシカみたいや〜」で、平次は「なんちゅうボキャブラリーの貧相な女や」なんて呆れてたけど、いつもこの季節になると、タイミングを計って連れてきてくれる。

橋の上に止まって、じっくりながめたこともあったけれど、風をきってながめるこの景色にはかなわない、絶対に。

橋のなかほどで、ほんの少しスピードを落としてくれる。
少し平次から体を離して、川面をながめる。

早朝、R1、宇治川大橋。
この時期、この時間、一瞬だけの、黄金色の魔法。



<<