洗濯



もくもくむくむくと湧き上がってくる夏雲が、真っ青な空に映える梅雨の合い間の洗濯日和。

「あああっ!」

リビングのソファーにごろりと寝転びながら雑誌をめくり、青子の家事が終わるのを待っていた俺は、庭からの声に視線を雑誌から外して、真っ白なカーテンがひらめく向こう側を見遣る。
そこでは洗濯物をいっぱいに詰めたカゴを持った青子が、むうっとほっぺたを膨らませながらこっちを睨んでいた。

「ちょっと快斗っ!ワイシャツのポケットにティッシュペーパー入れたままだったでしょっ!?」
「へ?ああ、そういや・・・」

ショーのネタ用に仕込んでおいて使わなかったんだっけ。

「んもうっ、洗濯物がティッシュペーパーまみれだよ〜」

青子は、事の元凶である俺のワイシャツの両肩をつかんで、そのままふわりと宙へ躍らせる。
青子がワイシャツを青空へと躍らせる度、シャツの至る所からふわふわと舞い上がる紙屑は、ぴかぴかの陽光を受け、白く輝く天使の羽毛みたいだった。

―― それは、窓枠の中、光あふれるファインダーで切り取られた一枚の写真のようで。

シャツが振り下ろされる度に、風をはらんで天使の羽音が聞こえる。

「むー、きれいに取れないよー」
「青子、天使みてーだな・・・・・・」
「はぁっ!?何言ってんのよ、快斗」

ちょっとふくれっつらでこっちを見ているティッシュペーパーまみれの天使のご機嫌をとるため、俺はゆるゆるとソファーから起き上がった。

2005/06/11


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