責任



「かかかか快斗っ!」
「んだよ、朝っぱらからウルセーなー・・・」

黙らせようと抱き込みにかかってくる快斗の腕を振り払って、目の前に左手の薬指を突き出して見せる。

「これっ!いつの間に!!」
「ああ、プラチナだぜ、キレイだろ。盗んだわけじゃねーから安心し・・・」
「そうじゃなくって!」

そう、問題はそこじゃない。

「コレ、ちっとも抜けないんだけどっ!!」
「なんで・・・外す必要ねーじゃん」

快斗は明らかにむっとしたけれど、こっちはそれどころではない。
そりゃまあたしかに、指輪自体は嬉しかったのだけれども。

「だって、左手だよ、薬指だよ?それに、コレ・・・シンプルすぎてほんとに結婚指輪みたいだし・・・」

学校にしていくには、ちょっと、いやかなり問題なのではないだろうか。

「ああ、だったら大丈夫。つけっぱなしで」
「・・・なによ、ソレ」
「責任とって、おれがそのままもらってやるから」

改めて買う必要なくって一石二鳥だなって。
あくびなんかしながらしれっとそんなことを言い放つ快斗。

「なっ、なっ・・・」
「ハイハイ、もーいいだろ。」

そう言って、快斗は有無を言わせずわたしを抱き込み、そのまま夢の世界へ旅立ってしまった。
こうなったら、もう諦めるしかなくて。
わたしも不本意ながら夢の世界へとお供することになってしまった。





もう一度目覚めた時には、すでに時計の針はてっぺんを過ぎていた。
当たり前だけれど、寝る前と同じく、指輪はしっかりと左手の指に収まったままだった。

「でも、なんで抜けないのよっ」

ぎゅむむー、と再度指輪を引っ張ってみたけれど、やっぱり抜けなくて。
力を入れすぎてほっぺたに血が上り、真っ赤になった顔の私を、またいつもの何かを企んでいる満足げな表情で見て、快斗はぽそりとつぶやいた。

「太ったんじゃねーのか?」
「そんなことないもん!」
「まぁでも、そりゃ、そうだろうな。つくったの、だいぶ前だし、わざと青子のサイズよりもちょっと小さめに作ったから」
「な、ナニそれ!?」
「まあ、いいじゃん、ちゃーんと責任はとってやっから」

そういうと快斗は、ほんとうに満足そうに、イタズラが成功した子供のように笑った。
 



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