破れてしまった


 



「ヨーコ!」

振り返れば、目の前にカミナの顔が迫っていて、驚いて固まる私の背中に腕が回され、唇が重ねられた。

最初は触れるだけ
次にそっと重ねられ
やさしく舌唇を食まれた
舌が口角をなぞり
重ねたまま上唇を滑らせさた舌
やっぱりゆっくりとさしいれされた
何度か舌を絡ませた後、一度離された唇

「戻ったら、じゃなかったの」
「やっぱり、気が変わった・・・」

もう一度、今度は強く、ただ重ねられただけだったけれど、唇を重ねた回数は、きっちり10回。

嬉しいはずなのに。ぽろぽろと、なぜか零れ落ちる涙。
頬を伝う感触に、瞳を開ければ、そこにはやはりカミナの顔はなかった。

もう一度瞳を閉じたけれど、もう夢には戻れなくて。
行き場のない気持ちが、涙とともに零れて、なくなってしまえばいいと思ったけれど、破られた約束ごと思い出だから。


約束は破れてしまったけれど、彼の想いは、グレン団は、まだ敗れてはいない。

私が、やぶらせはしないから ――

 


2012/05/22


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