「青子、今年は?」

わかっているくせにそういう事を聞いてくる快斗は、ほんっとうに憎たらしいと思う。
素直になれなくて、むうと睨み返したけれど、当然のように青子の視線に力はなくって、快斗はすっと目を細め、余裕の表情を浮かべたままだった。
そんなイジワルなところですらカッコイイと思えしまう、なんて。

わかってる、敵わないんだ、快斗には。

ふうっと大きく息を吐く。

「ほ、ほら、これ。ありがたく受け取りなさいよね」
「サンキュ」

ドキドキで、指の先まで少しピンク色になっているくらいなのに。
快斗はことさらゆっくりと私の手からチョコレートの包みを受け取り、満足そうに笑うと、今度はぺたり、と子供が熱を測るときのように額をくっつけてきた。
いま、青子の体温は急上昇中だ。
酔っているわけでもないのに、頬に、額に熱が集まり、ぼうっとなる。

唇のすぐ近くに快斗の吐息を感じて、息をすることも出来なくて。
瞳を閉じたくても、快斗の瞳から視線が外せない。
こらえていた息を吐き出すと同時に、ゆるく唇がふさがれた。


軽く触れて、離れて、また触れるだけを繰り返す、でも長い長いキス。
タイミングを逃して開かれたままの瞳には、快斗しか見えない。

これは、ユメじゃないのだろうか。

そのまま快斗の瞳に吸い込まれて、現実の世界に戻ってしまいそうで。
覚めるのが怖くて、そっと瞳を閉じたけれど、頬に触れたやたらに冷たい快斗の指の感触が、これはユメじゃないとはっきり主張していた。


2006/2/12


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