待ちぼうけ

「遅くなっちゃった・・・・・・」

PM 5:00
教室にはすでに人影はなく、一面暖かなオレンジ色の光に包まれていた。
その光と、柔らかな雰囲気と、ほのかな暖かさに包まれていたくて、そのまま教室の中で何をするでもなく佇む。
窓の外からは、部活にいそしむ生徒達の掛け声や、吹奏楽部の奏でるやさしい音色、時折金属バットの軽快な音が響いてくる。


教室の中ほど、少し後ろのほう。
いつも、主のいない席がひとつ。


そんなことで、遠くにいる彼へ何かが伝わるわけではないけれど。
ゆっくりと歩を進め、そうっと新一の机に手を置いてみた。



ひょっとしたら。
明日になれば、何事もなかったかのように彼がこの席にいるかもしれない。
そう、何もかも以前と同じ。
気がつけば、いつもそばに彼がいてくれた優しい日々。
そんな日常が戻ってくるのではないかと。


「先に戻ってろ。すぐ、追いつくから」


そういって別れた幼馴染。
あれから、彼の姿を目にする事はなくなってしまったけれど。

その言葉を信じて。

明日になれば、明日こそは。
この場所で、会えると信じて。


蘭は教室を後にした。


明日は、きっと ――

2005/12/03

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