泣いて泣いて泣いて



真っ青な空に、ひらひらと白い花びらが吸い込まれてゆく。
新緑の輝きに包まれた葉桜がまっすぐに枝を伸ばす。

もう、桜の季節が終わる。

風が運ぶのは、あたたかくてやわらかいものなのに、私の心は、あの時から凍りついたまま。

空を見上げて、ため息一つ。
暖かな日差しも私の心を溶かしてはくれない。

見上げた太陽がまぶしすぎて、瞳を閉じた ―― 瞬間、後ろから抱きしめられた。

 

「悪ぃ、遅刻」

懐かしい声に、心が震える。
振り向こうとしたけれど、がっちりと抱きしめられていて、そうでなくても、息することすら出来ないくらいの胸の苦しさに、指1本すら動かすことが出来なくて、振り返って確認することは出来なかったけれども、背中に感じるすべてが間違いようもなく、快斗だった。

「か・・・」

もう、会えないと思っていた。
約束だなんてきれいな言葉に言いかえてみたところで、それはただのお別れの言葉だと思っていた。

ほろほろと、流れ落ちる、涙が止まらない。
言葉のかわりに、頬を伝い零れる涙が、青子を抱きしめる快斗の腕におちてゆく。

「な、ちゃんと、約束、守っただろ?」

 

―― 泣かす

 

「ば、か・・・いと・・・」

 

涙でゆがむ地面に、ひらひらと白い花びらが降り積もる。

桜の季節が、もうすぐ終わる。

 

2012/05/17


某方のお話の続きと言うかなんというか。書く書く詐欺してたものです。


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