フルーツ
あたり一面ほわほわと立ち込める温泉の湯気と、その隙間を縫うようにひらひらと舞い落ちる桜の花びら。
「すごいねー、キレイ・・・」
入るまでは、あれほど恥かしいと駄々をこねていたのに。
まるで桃源郷みたいだね、と舞い散るはなびらをお湯ごと手で掬い上げては、ほのかに漂う桜の香りを楽しむ姿はまるで幼い子供のようだった。
「なぁ」
「な、なによ」
「青子、桃みてーだよなぁ」
少し熱めのお湯に上気した肌は桃色に輝き、あんまりにもやわらかくてうまそうで。
そう言って肩口に甘く噛みついてみた。
「なっ、なにすんのよっ!!」
桃というよりは、熟れた李色になった青子は、そう言ってふいっとそっぽを向いてしまった。
本当に怒っているわけでないのは、まわした腕を無理に振りほどこうとはしない事からわかっているのだけれど。
「・・・こっちむいたら?」
「バカッ!」
そういって、逃げようとした青子をさらに引き寄せて腕の中に閉じこめる。
やっぱりそっぽ向いたままの青子は顔だけでなく全身が桜色になっていた。
soraさん宅の桜祭りに