突然、後ろから腕を引かれ抱き寄せられた。

「え・・・ちょ、ちょ・・・」

咄嗟に体勢を変え、ぐーで殴ろうと、つかまれた腕と逆の方を振りあげれば、そちらの手も押さえつけられた。
目の前にはサングラスに帽子の怪しい・・・待ち人の顔。

「な、なにするの、こんなところで・・・」

ほんとは聞かなくても、わかってる。
サングラスを外し、ずいっと一気につめられた距離、顔が近い。

「や・・・っ」
「いやだったら目、閉じんなよ」

それは、ずるい提案だ。
まっすぐこちらに向けられた瞳に、青子が、青子だけが映っている。
今まで遠く離れていただなんて、思えないくらいの近さに胸が苦しくなる。
もし、このまま瞳を開けていても、やっぱりキスされてしまうんじゃないだろうか。

キスされること自体はいやじゃない。
むしろ、したい、して欲しい。
触れ合って、求め合って、これまでの寂しさを埋めたい、埋めて欲しい。

このまますべてを快斗にゆだねてしまいたい、でも瞳を閉じることが出来ない。
どうしたらいいかわからなくて、泣きそうな顔をしていたのかもしれない。

視線がはずされ、もう一度ぎゅっと抱きしめられた。
青子も抱きしめかえせば、耳に優しい声が響く。

「すっげ、会いたかった・・・」

聞きなれた声、でも、普段とは全く違う、あまくて優しい声。

ああ、快斗だと。
なんだか安心してしまって、快斗の胸に顔をうずめ、瞳を閉じた瞬間、すぐにおとがいを掬われ、唇をふさがれた。



2012/5/16


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