もしも



目の前には、どこまでも広がる真っ青な空。
やがてその先に紺碧の宇宙と、ちかちかと白く蒼く輝く星たちが見え始めた。
そこまで来てようやくふうっと肩の力を抜き、隣でまっすぐ前をみつめている突然の来訪者を観察するくらいの余裕が出てきた。
久しぶりに見るその横顔は、なんだか自信というか充実感に満ちていて、以前の面影を残しつつも青年の精悍さをコレでもか、と言わんばかりに放っていた。

「なんだよ、まじまじ見つめて。なんだ、惚れ直したかー?」
「そんなわけないでしょっ!」

きっと、真っ赤になっているに違いない、そんな自分がなんだか恥かしくって。
ちょっとぶっきらぼうに問いかけた。

「ねぇ」
「なんだ?」
「もし、もしもよ?私が行かないって言ったらどうするつもりだったの?それに3年間も放りっぱなしにしてて・・・刃のことなんて忘れちゃってるとか、そんなこと思わなかったの?」

そんな私の問いかけに、刃はちょっとびっくりした表情を浮かべ、その後スグに、にんまりと笑いながら答えた。

「だって、さやかは俺の女なんだろ?」
「なっ・・・・・・」
「だって 最後のあん時、ヒテーしなかったじゃねぇか」
「そ、それは・・・」
「それに、俺わかったんだ。父ちゃんは母ちゃんを置いてけぼりにしてるけど、俺はやっぱりさやかが一緒じゃなきゃイヤなんだって。だから・・・・・・」
「だ、だから何よ」
「がんばって修行して、今だったら、何があってもさやかを守れる自信がある!だから迎えに来た!!」

さやかも俺といっしょのがいいだろ?そんな風に、まっすぐあの頃と変わらないあの瞳で私を見て、笑う。

ああ・・・私はこのまま刃に一生振り回されるんだろうな・・・。
でも。
でもそれは全然イヤじゃないんだ。

目の前で、最後に会った時と変わらぬ笑顔で笑いかけてくるコイツ。
悔しくて思わず抱きついた私の行動に驚いたのか、一瞬空中をさまよった腕は、すぐにそっと背中に廻された。
それは前とは違ってすっぽり私を包み込んでくれていた。

2005/11/08


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