クチビルノスルコトハ
「・・・も、いっかい」
そういって、今度は深く くちづける。
それから、花火の光と音にあわせるようにして、頬へ、まぶたへとくちびるを移す。
「か、いと・・・」
くすぐったいのか、恥かしいのか、拒否しているというわけではないのだけれど、腕の中の青子はくちびるが触れるたびに、もぞもぞと位置を変えようとする。
「魔法、かけなおしてんだからじっとしてろ」
耳元で低くささやくと、青子は腕の中で体を硬くして大人しくなった。
くちびるはそのまま耳たぶから髪へ、くびすじへと移る。
くちびるが触れるたび、わずかに震える肩。
ほんとなら、頭のてっぺんからつま先まで全部キスしてしまいたいところだったけれど、こんなところで出来るはずもないから、せめて目に見える部分、すべてに。
最後に握り締めていた左手をとって、そのまま指輪にくちづけた。
このままだと、ドキドキして死んでしまうかもしれない。
今日一日、快斗の知らない部分をいっぱい見たけれど、いやなところなんて一つもなかった。
どうしてだろう、今の快斗だって全然いやじゃない。
ただ、恥かしくて、目をあけれなくて。
快斗のくちびると吐息が途切れ途切れに触れるたび、胸のこの辺りが、きゅうって苦しくなって、ほんとうに魔法をかけられているてるみたいだよ。
すいっと、快斗の体が離れて、熱が遠ざかる。
どうしたのかな?ってそっと目をあけたら。
快斗は私の手をとって、指に口づけた。
約束の指に。
いま、目の前でぼうっと俺を見つめてる青子。
今まで、どんなに欲しくても得られなかったものが、こんなに風に手に入ったのは夢なんじゃないかと、らしくもない不安で苦しくなる。
この胸の痛みを取り除けるのは、俺だけの魔法使い。
「なぁ、青子」
「・・・?」
「俺にも魔法、かけてくれよ」
思わず出た言葉。
目の前の青子はやっぱり ぼうっと俺を見つめて・・・
返事のかわりに、そっと首筋にまわされた腕。
そっと、頬からまぶたへとうごく、やわらかいくちびる。
まさか、ほんとうに叶えられるなんて思ってもいなかった。
くちびるが耳たぶに移ると、青子の髪に顔をうずめるかたちになり、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。
青子の香りで、頭のなかがまっしろになる。
はっと気づくと、左手をとられていた。
恥かしそうに俺の薬指にくちずける青子が愛しくて
もう一方の手で、自分の腕ごと青子を抱きしめた。
最後までお手間取らせてしまって、ほんとにすみませんでした&ありがとうございましたの気持ちと、お誕生日おめでとうございますの気持ちをこめて、みやさんに差し上げたものでした。
2004年のクリスマスリング企画に、青い羽根の作品として出させていだいたものです。
なんかうまく表現することができなくて、最後までだそうかどうしようか悩んでたので、最終日のみのアップになってしまいました。
ちょうどみやさんのお誕生日だということを教えていただいて、企画に便乗みたいな形になってしまいましたが、誘っていただいてうれしかったという気持ちと、最後までお手間取らせたお礼に、と思ったのですが、お礼になってなかったかも・・・ですね。