風
ふいに、背中に感じたあたたかな重み。
はじめは、甘えとるんか、かわいいやっちゃ、なんて思てたけど、だんだんずしりと重くなる。
なんや、おかしいで・・・。
「和葉・・・?」
小さく呼んでも返事はない。
「・・・寝てしもたんか?」
タンデムで居眠りて・・・ええ度胸しとんなぁ。
ちらちらのぞくバックミラーに映るもの。
青い空と流れる雲。
どこまでも続くまっすぐな道。
そして風になびく彼女の髪。
彼女を起こしてしまわないように。
彼女を落としてしまわないように。
握り締めたアクセルをそっと緩めた。